なごぱんと申します。私は中学・高校の理科教員として働いています。理科教員として授業に深みを出したいと思い,図書館で理科系の本を読み漁っています。今回はその中でも興味深い内容が書かれていた「身のまわりのありとあらゆるものを化学式で書いてみた」(著:山口悟)をご紹介させていただきます。
化学式で書いてみた
この本を読んで身のまわりのものを化学式で理解することで,「この現象はこういう仕組みだったのか!」と理解することができるようになりました。小学生から~大学生まで幅広い層にお勧めできる本になっています。今回はその中でも私が印象に残った内容の概要を紹介したいと思います。
芳香剤の原理
私たちが普段使っている芳香剤。良い香りがするものもあれば無臭のものもある。あの物質は一体何なのか。本著を読むまで考えたことすらありませんでした。
我々が普段食べているお米の成分はデンプンであり,ブドウ糖(グルコース)が300個ほど繋がっているものです。そのグルコースは化学式で表すとC6H12O6と表します。(Cは炭素,Hは水素,Oは酸素を表す元素記号です。(中学校で学ぶ内容です)グルコースは六角形をしており,数個が輪っか状に繋がると「シクロデキストリン」という物質になります。芳香剤の正体はこの輪っか分子の塊なんですね!
シクロデキストリンの輪っかの中に香りのもとになる分子を入れることができ,中に入れた分子は時間が経つとシクロデキストリンから外に飛び出していきます。また外部に臭いのもとになるものがあれば反対に取り込むこともできます。これが芳香剤の原理です。
私たちが普段食べているお米と,芳香剤をつくる成分が同じであるということに驚きです。
虫歯の原理
私たちの生活に身近なものである虫歯のメカニズムについてです。これを知っておくことで歯磨きの大切さに気付くことができると思います。
歯の成分は「ハイドロキシアパタイト」という物質です。化学式で表すとCa10(PO4)6(OH)2です。なんか複雑ですね(汗)。高校化学でも習いませんのでご安心を。笑
この物質は虫歯菌の出す酸(乳酸等)から発せられるH+(水素イオン)によって溶けてしまいますが、H2O(水分子)があると復活します。水で歯が復活するというのも不思議ですね。この現象を理解するためにも化学式は必要なんです。それでは歯が溶ける化学反応式を見てみましょう。
Ca10(PO4)6(OH)2 + 8H+ → 10Ca2++ 6HPO42-+2H2O
の反応によって歯は溶けていきます。つまりH+が多く存在すればするほどハイドロキシアパタイトはイオンになり溶けて行ってしまうのです。菌は歯垢の中に多く存在しますので,物理的に除去する必要があるのです。歯磨きって大切なんですね!
一方、以下のように反対の化学反応も成り立ちます。
10Ca2++ 6HPO42-+2H2O → Ca10(PO4)6(OH)2 + 8H+
つまりH2Oが多く存在すれば,ハイドロキシアパタイトは復活し再石灰化が進むのです。だ液の成分はそのほとんどが水なので,唾液の多い人ほど虫歯になりにくいというのは本当だったんですね!
まとめ
化学式や物質の構造を知ることで,身のまわりの現象を理解することができます。授業の中でそのような知識を織り交ぜることで,教員自身もアウトプットができ,生徒も理科に興味をもってもらえるので一石二鳥ですね!本著には今回ご紹介した内容以外にも面白知識が多く紹介されています。皆さんもぜひご一読を!
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