【いじめの科学】いじめを経験で語るな!科学せよ!

「いじめ」とは誰もが加害者・被害者になりうるものです。そして教員という立場になるとその解決を求められる立場に立たされることもあります。自分のクラスや周囲でいじめが生じた際の対処の難しさは教員の方なら肌で感じた経験があるのではないでしょうか。私もいじめ問題に対する自分の意見を持つために多くの文献や著書を読みました。本日はその中でも私の記憶に強く残った本をご紹介できればと思います。

今回は和久田 学 氏著「いじめの科学」という本をご紹介します。

この本は私の教員生活においても「いじめ」に直面した際に支えとなっている一冊です。

本著の中で「科学」とはどのような意味なのか?この本の中では「科学=再現性のある専門知識や指導法」として扱っています。つまり、教員の「経験」を再現性のある「専門知識」に落とし込んでいる点がこの本の素晴らしい点だと思っております。

では、いじめが生じ,継続されるための条件とは何か?

いじめが生じる原因(重要な2要素)

いじめが生じる原因に大きく関わってくる2つの要素を本著は挙げています。

1)「力の不均等」=アンバランスパワー

関わる人間関係における上下関係が生じている状態。わかりやすいものでは職場の「上司と部下」、学校生活における「先輩と後輩」などが挙げられますが、年齢や立場だけでなく人間関係における上下関係も含まれます。

2)「不公平な影響」=シンキングエラー

この言葉の意味は、「加害者側が相手の気持ちを傷つける可能性のある行為を重要と考えていないこと」というものです。

2つの要素の不均衡によりいじめが発生

本著ではいじめは、人物の関係性の「力の不均等」=アンバランスパワーと「不公平な影響」二つの条件がそろったときにいじめが生まれ、当事者同士では解決できない状態になるのです。

逆に言うとこのどちらかを崩すことができれば、いじめを防ぐこともできるのです。このシンキングエラーを正すには時間がかかります。一過性の罰に納めないことが重要です。加害者と被害者は物理的にも距離を離す必要があります。近年ではSNSの普及もあるため、物理的距離を離すのは非常に困難になっています。教員や親が引き離したつもりでも離れていないパターンもあります。

いじめを放置し対処を誤ると加害者は「いじめは問題のないもの」と捉え、さらなるシンキングエラーを起こしていきます。いじめにおける被害者への影響としては自己肯定感が傷付き、学力や社会的能力の低下につながるという研究もあるそうです。

いじめの傍観者は被害者が不幸な結末になった際に罪悪感を覚え,自己肯定感の低下を招きます。さらに日常的にいじめを見ることで共感性をなくし,シンキングエラーを起こします。

いじめは関わる周囲の人々を決して幸せにはしないものであるという理解をしておく必要があります。

まとめ:いじめは誰も幸せになれない

私は,教員として経験則だけに頼らず,専門的に状況を見る力が不可欠だと思っています。教員という立場からもいじめを科学する姿勢を持ち続けていきます。教員だけでなく、多くの方に読んでいただきたい一冊です。

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